臨床心理実践家が、基礎心理学のデータを有効に利用していくことが出来れば、日々の仕事がより質の高いものになる。・・・というのが理想ですが、学習心理学と行動療法の様に基礎と臨床とが直接的なつながりがない場合、中々そういったことは難しいわけです。そこで、「臨床に活かす基礎心理学」を読んでみました。
坂本 真士,伊藤 絵美,杉山 崇
東京大学出版会
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第3章「神経―生理学を活かす」
この章は面白かったです。脳波や脳機能画像を見るときに、「○○の部位が活性化しているから××だ」と、短絡的に見てしまいがちです。そこには以下の指摘があります。
例えば,ある課題を遂行している際に二つの脳部位の活動に関連が観察されたとしても,それらの脳部位が本当にシステムとして機能しているのか,偶然に活動が共起したのか,未知の過程を反映する別々の活動に過ぎないのか,を客観的に判断することは難しい.その場合に基準になるのは,解剖学的な神経連絡の知識である。(大平英樹)
解剖学的な視点というのは、深く理解できていないので、そのあたりの「見方」という部分はすごく参考になります。
扁桃体と前頭前野を中心として、情動制御や依存についてよく書かれています。
その他の感想
第4章「行動心理学を活かす」もわかりやすく書いてあります。
ただ、認知心理学に関しては認知情報処理理論の多くがCBTに応用されているので、そのあたりを取り上げて欲しかった感じました。発達心理学、パーソナリティ心理学についても執筆者の研究課題が中心で、すでに応用されている基礎研究がありそうです。社会心理学についても、自己注目や自己没入といったところは、WellsやClarkなどから「自己注目」「反芻」など臨床で既に基礎とが結びついて発展している部分があるので、そのあたりを紹介してもらった方が良いのにとおもいました。
これからの発展を考えていくと、ただ単に「基礎心理のこういうデータを参考にすると、Cl.をこのように理解することが出来る」という解釈にとどまるのではなく、基礎心理学のデータをクライエントのサポートに実際に結びつけた上でデータをとって、基礎の臨床への適用度を吟味した論文がたくさん書かれていくことが必要なのでしょう。